【花束】(300字)
会社の屋上に、花束がぽつんと置かれている。そのせいで、飛び降りがあっただの事故だのと、昼の社員食堂が騒がしい。意味ありげに置かれた花束を見ると、人はなぜか悪いほうに捉えてしまうみたい。僕はまったく逆の意味であれを置いたのにね。
あの場で飛び降りようとした人がいたのは事実。でも、僕は結局そうしなかった。だから、あれは新しい僕の誕生を祝う花束だ。僕から僕へ贈る、僕を祝福するための花束だ。
そんな嬉しい花束も、見る目しだいで簡単に意味が転じる。深夜の屋上から見下ろしたネオン街が案外、ちゃちな玩具じみていたように。世界のそういうペテン師ぶりが面白くなって、僕はあの花束を意味ありげに置いてみたんだよ。
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人騒がせないたずらはやめましょう。
いつも♡ありがとうございます。励みになります。
おかげさまで昨年お題30本マラソンを走り切って、その成果が1冊の文庫本(一次創作同人誌)になりました。
2023/4/26のお題『流れ星に願いを』から2023/9/23のお題『声が聞こえる』までの31本+書き下ろし1本をまとめています。
どこかのなんらかのイベントで『#書く習慣と眠る習慣』というタイトルの本を見かけたら、それがまとめ本です。タイトル被りがなければ、たぶん本物です。よろしくお願いいたします。
2/10/2024, 3:18:24 AM