世界の終わりに君と。なんてロマンチックな表現だろう。
もし世界が終わるなら、誰とともに過ごしたいだろうか?やはり一番は兄弟だろう。私にとって最も愛する家族だから。
兄弟と一緒に語り、そして兄弟とともに終わりを見届けたい。
私の答えは家族に決まっている。けれど、せっかくこんなに美しいお題が出たのだから現実的な話じゃなく、ロマンチックな物語を作ってみよう。
「世界の終わりに君と」
しゃらしゃらと舞うように花びらが踊る桜並木を君と並んで歩く。
彼女が言った。
「ピンク色の蝶々も居たら良いのにね」
そのとたん、目の前を通った花びらがふわりと舞い上がりピンクの可愛らしい蝶々へと変わる。
蝶々はパタパタと重そうに羽を動かしながら彼女の周りを2.3周回って再び花びらへと戻った。
彼女の言葉は魔法だった。信じられないほど美しい彼女は名前も住んでいる場所も年齢も教えてはくれなかった。
けれど、なぜか私にだけ魔法が存在することを目の前で証明して見せた。
「桜はさ、儚いよね。すぐに散っちゃう」
彼女は私に笑いかける。その笑みは桜並木の中でひときわ輝いているように見えた。
「人もさ、儚いよね」
その言葉は、まるで自分は人ではないかのような言い草だ。
君は、、、そう言いかけて彼女に遮られた。
「何も言わないで。君は何も知らなくていいの」
彼女は桜よりも華やかな笑顔で続ける。
「私はね。ただ世界の終わりに君と一緒にいたかったの」
「このきれいな景色の中で君は幸せなまま最期を迎えられる」
世界の終わり?幸せな最期?何を言ってるのか全く分からなかった。
「どういうこと?」
思わず私は問いかける。
その瞬間。眼の前にあったのは美しい桜並木ではなく燃え盛る街と逃げ惑い叫び狂う人々だった。
困惑して、辺りを見回すも彼女はもうどこにもいなかった。
耳をつんざく爆発音が聞こえ、体が宙に浮く。
そのときに彼女が言ったことを理解した。
6/7/2024, 12:43:50 PM