夏。蒸し蒸しとしてとても暑く苦しい。
私は8月生まれの「夏海」だ。
私は夏が大っ嫌いだ。
家族にも友達にも驚かれるが、どうしようもなく嫌いなのだ。
私が夏を嫌いになったのは5年前の出来事だった。
「なっちゃーん 遊ぼー!」
「海行こ、海!」
「ほんと元気だねぇ…行こっかぁ…w」
私は冬華が大好きだ。
いつも明るくて、初対面なのにびっくりするぐらい話してくれて、本当に可愛かった。仔犬みたい。
元々、あまり人が好きではなかった私が初めて一緒にいたいと思った。
人が苦手で友達もいなかった私にとっては冬華といる日々は楽しすぎて幻だと思ったほどだ。
そんな冬華と夏休みに初めて海に行った。
泳いだり、
ビーチバレーしたり、
砂遊びしたり、
かき氷を食べたり、
とにかく一日中遊んだ、時が過ぎるのも忘れて。
あっという間に夕方になってしまった。
「明日暇?」
「暇だけど…どうしたの?」
「明日も遊ぼうよ!夏休み中毎日遊ぼ?だめ?」
すごいこと言うなぁ…体力持つかな…w
「体力お化けが…w いいよ、遊びに行こw」
「やったー!めっちゃ楽しい夏休みになる!」
「「またあしたね、」」
「「おはよ!」」 「「またね!」」
「「おはよー」」 「「また明日!」」
本当に夏休み中毎日遊んだ。
もう今日で最終日。
今日は橋の名所を見に行こうと言っていた。
(正直橋とかわかんないけど冬華が楽しそうだからいいやw)
「おはよう」「おっ、やっときたー!行くよ?」
ひたすら歩いた。
まさか徒歩だと思っていなかった私はクタクタになってしまった。
「ま、、まだ?もう限界…」
「後ちょっとだよー!頑張れ!」
本当に絶景だった。
少しでも顔を出せば真下にとても澄んだ海があった。吸い込まれそうだ。少し怖くなった。
「なんで、、、ここに…?」
「うーんたまたま?見つけた時ビビッと来たんだよね、ここがいいって」
よく分からなかった。ただ疲れていて頭も働いていなかったんだと思う。
「夏海、、学校好き?」
えっ……?冬華の声…変わった…?
「あんまり、かな、」
「夏海、私の事好き?」
また声色が変わった。余計低くなった。いつもの冬華じゃない。
「もちろん、大好きだよ。」
「そっかぁ…」
自分で聞いておきながらあまり反応がなかった。
「冬華?なんか変だよ?」
「……」
冬華は泣いた。声もあげずに。ひたすら泣いていた。
私は驚いた。なんで。なんで。冬華?
唐突に強い風が吹いた。
そして、冬華はそのまま消えた。
どうなったのかは結局分からなかった。
あとから冬華が虐められていた事を知った。
きっとあれは最後のSOSだったんだと思う。
今どこにいるのか私には想像もできない。
生きていると信じることしか出来ない。
私は夏が嫌いだ。夏海が大っ嫌いだ
冬華に会いたい…
6/28/2023, 2:21:45 PM