きっかけは本当に些細なことだった。それが、こんな結果になるとは思いもしなかった。
結論から言えば、喧嘩をしてしまったのだ。それも、同居中のアイツと初めて。アイツが飛び出して行ってから全身が凍りつくように血の気が引き、自分が口走った内容だけが鮮明に蘇る。
元はと言えば自分の勘違いが原因だった。明日が記念日であることはお互いに分かっていたし、アイツが口下手な事は分かりきっていたはずなのに。だと言うのに、なぜ捲し立てる様な事を。
気づけばもう空が紅く染まっていた。夕飯、用意しないと。冷蔵庫の中には明日使う予定の食材達が鎮座しているが、使い道は変わってしまうかもしれない。二人を繋ぐものは、切れてしまったかもしれないのだから。
手をかけたのと同時に、部屋にアイツの「ごめんっ!」と言う声が木霊する。その声にひどく安堵し、へたりこんでしまった。
お題: 『悔ゆるものと昏』
6/2/2024, 2:31:29 PM