「好きじゃないのに」
そう言って不服そうに眉を顰める君は顔全体を真っ赤に染めていた。
君が見つめる先には僕は居ない、僕ではない他の人間だ。
僕はそんな君に「じゃあ僕にしなよ」なんて言えない。
僕なら、君をそんな顔にさせたりしないのに。
でも正直視線の先の彼が羨ましかった。
だって彼女がこんなにも感情を露わにしてるんだから。
彼は見向きもしないんだろうけど、それでも僕は彼女の恋人になりたいだなんて言えなかった。
悔しくて拳を握った。
「好きじゃないのに目が離せないんだ?」
僅かな抵抗をすると彼女は黙り込んでしまう。
あぁ、そんなにも好きなんだね。
もう隙間すら無いんだね。
「良いんじゃないかな、僕は応援するよ……僕は友達だから」
そう、友達だから。
君の隣に居る理由はそれだけで良い。
君がただ笑ってくれるのならそれで良い。
「……鈍感」
その声に僕は気付けなかった。
3/25/2024, 3:07:48 PM