→積乱雲の下に雨の兆し。
シャワーの音と湯気にあふれたバスルームで、彼女は髪を洗っている。
新しいシャンプーの香りは、昨日まで使っていたユニセックスのさっぱり系とは違いフローラルだ。
買ったばかりのヘアケア商品やフェイスパックが、使い差しの色々を押しやり、作り付けの小さな収納棚の隙間を埋めるように詰め込まれている。
しっかりと泡立てたシャンプーの泡の塊に包まれた長い髪を頭上に乗せた姿のまま、彼女はふと耳を澄ませた。バスルームの向こうにある1DKの部屋からはどんな音も聞こえてこない。昨日まであった物音はもうどこにもない。
ひとけの無さに彼女は唇を歪めた。鼻から熱い息が漏れる。鏡に映る白い雲を乗っけた姿が歪んだ。小さな嗚咽が漏れた。
明日、彼女は髪を切りに行く。
テーマ; 入道雲
6/29/2024, 1:42:41 PM