延々と続く田舎道を歩く。
代わり映えしない景色ではあるが、都市に比べ空気が澄んでいる。それだけでまだ救いようがあるだろう。
ふと、何気なく足を止めた。
風になびく髪をかき分け、目を凝らす。
黄金の波に紛れ、黒い耳と尻尾が揺れていた。
「んぅ……?おじさま?」
波の中に身を委ね、心地良さそうにする彼女がいた。
「こっちに来ませんか?静かで涼しいから、ぐっすり眠れるかもしれませんよ」
彼女に促されるままに、身体を横たえる。
確かに眠れそうだ。優しく通り抜ける秋風と、揺れる穂の音。見上げれば、悠然と星が輝いている。
何よりも、黄金の中に密やかに紛れ込む彼女も美しい。だが、その波の中に攫われそうで。
「……いいか?」
返事の代わりに、細く白い指が絡み合う。
嬉しいのか尻尾も巻き付いてくる。
穏やかな波に身を委ねた。
薄く微笑む彼女の顔が見えた気がする。
『晩秋の抱擁』
「ススキ」
11/10/2023, 10:37:52 PM