「ありがとう」「君の声がする」(2/14、15)
君の声がする。
苦しみ、助けを求める君の声が。
ここはかつて故郷だった場所。
今やただの焼け野原。皆が家も家族も失った。
君の声。どこだ、どこから聞こえる?
なかなか見つけられない。
燃え盛る炎の、ごうごうという音ばかり聞こえる。
見渡す限り、火と瓦礫。
君はどこ?
火の中から聞こえる叫び。
僕は燃える家だったものに飛び込む。
僕も燃える。僕が焼けるにおいがする。
見つけた。君がいる。
僕は君を瓦礫から引き摺り出した。
ボロボロの君と僕。
君は絞り出すような声で、僕に「ありがとう」と言う。
嬉しかった。ほっとした。
でも、君はもう動かない、息もしない。
助けたのに、助けられなかった。
この街に、焼けた僕だけが残った。
孤独な僕が、残ってしまった。
生きる術も、目的も、全て失った僕に価値はない。
僕も、瓦礫の一部になってしまおう。
せめて君だけは、綺麗な姿で残ってくれ。
さようなら、ありがとう。
2/16/2025, 1:28:34 PM