大きな地震があって、私の暮らすところでも停電が続いたとき、夜の空には星が溢れていた。いつもは街の光が明るすぎて見えていなかった星が、そのときは地上に光を届けてくれていた。星で空が明るいさまを、私も子ども達も口をあけて眺めた。
家々の灯りも、街灯も、信号機も、何も光らず沈黙した数日間、夜空はきらきらと宇宙の姿の一部そのままだった。電気への依存が高く、脆弱に過ぎる街は住人の不安とピリピリした気分が漂っていたが、夜空を見ると誰もが不安をちょっと忘れたようだったことは印象深い。
誰も気付かなくても星の光は「在る」。ふだん見えなくても星はしっかりと輝ききらめいている。観測できないのは星の光が弱いからではなく、人間が「気付かない」か、「見ない」だけで、星の輝き自体は揺るぎないのだ。
何よりも、自分達人間の脆弱な社会的側面に起因する不安感を一瞬でなだめるなんて、星はやっぱりすごいと思う。キレイなだけじゃない。流石は星。
3/15/2024, 11:36:37 AM