たなか。

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【ここではない、どこかで】

眠れない夜に散歩をするなんてよくあった。理由は風が気持ちいいからとかコンビニに行きたいからとかそんなもん。ここではない、どこかで何かをしてたいだけ。息が詰まるから。そんな人が近所で私以外にもう一人いるとか奇跡あるんだ、そんな風に思っていた。彼は彼で大変らしい。二人とも少し暇をつぶすだけの公園でたまたま会っただけ。自分以外で深夜にブランコに乗る先客が珍しくて変だと思って声をかけてしまったんだ。
「よかったら、お酒一緒に飲みませんか?」
コンビニで買っただけの缶のお酒。一人で飲むのも空しかったのかもしれない。彼と話してる時の中身のあるようでないような会話が心地よかった。いつも通り散歩をして公園に行っていつもは先にいるのに今日はいなかったってそれが普通だったのに。元からいないのが普通で、話してたのが異常だったかもしれない。その日から、一人でまた虚しく酒を呷るようになった。ある日のニュースのこと。高校生の男の子が死んだといういつもなら気にしないようなニュース。そのニュースには知った顔が映っていた。公園のあの子。
「あー、あの子高校生だったんだ。」
未成年飲酒か。ここではない、どこかでなら許されていたのかな。ちょっとは好きになってきてたのに。

4/16/2023, 3:25:47 PM