「熱っ……」
後頭部に当たる直射日光に思わず顔をしかめた。やっぱり、日光は木漏れ日程度の、ほどほどに弱められたものに限る。
【木漏れ日で育つ】
太陽は嫌いだ。肌が弱いのか、昔からちょっと日差しの強い日に外出しただけで赤くなってしまう。そのくせ、暗いのも寒いのも嫌だった。だから、家のすぐそばにある山に、僕は頻繁に足を運んだ。
太陽の本来の光は、ほとんど頭上に生い茂る木の葉が吸ってしまっている。僕にはそれがちょうどよかった。強すぎる光は、樹木と半分こ。ずっと、そうやって生きてきた。
僕の足元、木陰になって少し湿った地面に広がる苔たちが、友人のようなものだった。
「あっおはよう! ねえ聞いてよ、今日さあ」
だから別に、何も問題なんてないのだ。
「……それであいつ、また私のお金あてにしてて」
あいつ。僕じゃない誰か。君の光を、僕より先に受け取る男。
僕は、僕の人生はこれでいいのだ。だって君の笑顔はきっと、僕が浴びるには眩しすぎる。
「話聞いてもらえてすっきりした! ありがとう!」
この木漏れ日のような微笑みだけで、僕には十分なのだ。
5/7/2025, 10:25:57 AM