/怖がり
怖がりさん、
母はわたしをそう呼ぶのだった。
いつも彼女のあとを歩き、
背中に隠れているわたしのことを。
怖がりさん、いらっしゃい
そう呼ばれると安心して笑った。
わたしは母に、完全に守られているのだった。
怖がりさん……
わたしは怖がりのままでも大きくなり
いつのまにか好きな人を見つけ
その人にくっついて遠い町に来たけれど、
たまに母と会ってあのやさしい声を聞くと
母のうしろに隠れてみたくなる。
わたしを優しくとじこめていた、
今やわたしよりも小さなあの背中に。
3/16/2023, 10:45:06 PM