腹有詩書氣自華

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昔々、もっと昔、まだ夜空に星がなかったころのお話。

世界は昼と夜に分かれていたけれど、夜はただの真っ暗闇で、誰もが少し寂しい気持ちになる時間だった。そこで神様は考えた。
「夜を少しだけ明るくしよう。けれど、太陽ほどではなく、ほんのり優しい光にしよう」

神様は、世界中の人々の「大切なもの」を少しずつ集めて、夜空に浮かべることにした。
子どもが初めて描いた絵、恋人同士が交わした約束、大切な人のために流した涙——。
それらをひとつひとつ、そっと夜空に並べた。

 すると、どうだろう。
 漆黒の空に、ぽつぽつと小さな光が灯った。

それからというもの、夜空を見上げるたびに、人々は懐かしさや温かさを感じるようになった。
ある者は、「あの星には亡くなった祖父の笑顔が宿っている」と言い、またある者は、「あの星は昔、好きだった人との思い出だ」と語った。

夜空の星々は、ただ光っているのではない。
それぞれの想いを抱いて、遠い場所からそっと輝いているのだ。

だから今夜も、どこかで誰かが、静かに星を見上げる。
願いを込めて。あるいは、そっと思い出をなぞるように


──────題.星──────

3/11/2025, 10:10:21 AM