花鳥風月病

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【向かい合わせ】
夕焼けで思わず視界が歪みそうなあの日
白く柔いカーテンが生きて揺れている静かな教室
廊下ですれ違えば、少し話すだけの仲の君と
はじめてちゃんと話した日だった

同じ歌手が好きだということが分かり
その日の放課後、心は何かで満たされたいと
はじけていて、とてもわくわく焦っていた

机と椅子を引きずり、君と僕は
自分の話したいことを精一杯話し、また
相手の話したことを優しく受け止める
そんなあっという間な時間だった

君の黒髪に優しくオレンジの日が当たれば
僕を虜にするように、上目遣いで僕を見つめた
言葉にはできなかったけどとても、
好きというものに近い感情だったのかもしれない


しかし、それはろうそくの煙のように
ゆらゆらと消えてしまう夢であった
素晴らしいあの頃の夢、でしかない

スマホのタイマーの無機質な音に苛つく朝がきた
心までは温もりは届かないのに毛布を被る
楽しくもない毎日が今日も始まる

曇ったガラス窓に夕焼けなど差してはくれない
失った時間も、人も、なにもかも
僕には大きすぎたのかもしれない

ため息は僕を落ち着かせ、現実に引き戻す
目から流れる涙の意味は、まだ知らない

8/26/2023, 4:15:57 AM