ガッカリして、風呂場に向かった。
「ちょっと、何してるの! びしょびしょになって」
母の目が見開かれた。
「ベランダに居たから」
「はー?! なんでこんな台風の日に、ベランダなんか出るの? 危ないじゃない! ここ何階だと思ってるの!」
「18階」
濡れた服と、室内の冷房は、容赦なく体温を奪っていく。
早く風呂に入りたい。
「そうよ。死にたいの? 万が一、落ちたらどうするのよ! もう高校生なら、それくらいわかるでしょ」
風呂場に向かう俺を、母の言葉が追ってくる。
「うっせーなー」
扉を閉めて、母からの追撃を阻止した。
台風の中なら、飛べるんじゃないかと思ったんだよ。
力強い風に身をまかせることができたら、何か変わるんじゃないかって。
---
風に身をまかせ
5/15/2024, 9:03:54 AM