彼女と再開したのは、大学の卒業を機に地元の会社に就職してから4年目の夏、中学卒業してから初めての同窓会だった。
「よう!」
懐かしい顔ぶれと癖の強かった担任の話で盛り上がっていたなか、後ろから肩を叩かれて振り向く。
振り返った先には10年前とは雰囲気の変わった彼女が、あの頃と変わらない笑顔で立っていた。
「おう!」
「卒業式以来じゃない?元気にしてた?」
「そうだな」
曖昧な返事をすると、彼女はまた後でと言い残して隣のテーブルへ移動していった。
目を細めながら彼女の動きを追っていると、隣から話し掛けられて、旧友との会話の輪へ戻った。
一次会がお開きになるまで、再び彼女と話すことは出来なかった。
「二次会行く人ー!」
幹事の女子が手を挙げながら訊く。
周囲の人間に倣って手を挙げかけた時に、彼女の声が聞こえた。
「ごめーん、これで帰るから」
挙げた手の勢いのまま声を発していた。
「あ、俺も今日は予定あるから!」
帰りの駅へ向かうのは自分と彼女の二人だけだった。
中学時代の他愛ない話題に花が咲いた。
「そういえば今はどこにいるの?」
彼女から訊かれて答える。
「今は実家、近くに就職したんだよ。お前は?」
「私も実家にいる。この春に帰って来たんだ」
その話を聞いて、言葉に詰まりながらも早口で続けた。
「あの、さ、来週末会えるかな?」
「ごめん、子供と一緒にいなきゃいけないから」
「え?」
「あれ?知らなかった?離婚して帰って来たの。今や私も一児の母だよ」
あっけらかんと笑いながら彼女は答えた。
「あ、そうなんだ……」
いつの間にか電車に乗って地元の駅のホームに着いていたらしい。
「またね」
彼女から声を掛けられた。
意を決して彼女へ告げる。
「また君と会いたい……もちろん君の子も一緒に!」
一瞬呆気に取られた彼女があの頃と変わらない笑顔で答えた。
「いいよ」
夢見心地のまま、いつの間にか実家に着いていた。
交換した彼女の連絡先を見ながら、眠れない夜を過ごしたのだった。
5/13/2023, 10:00:04 AM