運命

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社会人になってから毎日が疲労の積み重ね
疲労という積もった雪の上を自分という雪玉が転がる。どんどん積み重なっていき、ついには大きな雪だるまとなる。僕にはその雪を溶かしてくれる人がいない。帰って来たら「おかえり」という人も、「行ってらっしゃい」と言ってくれる人もいない。疲れておぼつかない凍えた指先でカバンの中をまさぐり、鍵を見つけて玄関を開ける。暗い冷えた玄関を軽い靴の音が響く。履き慣れないはずだった革靴も今は色褪せている。ネクタイを緩めて服をハンガーにかける。
そういえば買い物まだだった。
軽く服を来てスニーカーを履いて出かけた。夜風に凍えてスーパーに行ったが閉まっていた。
そりゃあそうか。こんな時間にやっているわけがない
コンビニで軽く買い物をして道端にあった自販機で缶コーヒーを買った。ビニール袋を片手にぶら下げながらコーヒーであったまった口から白い芳ばしい息をはく。
普段通る公園の道もどこか懐かしく感じる。気まぐれで公園に足を踏み入れた。芝生を踏む感触が懐しい。子供の頃に遊んだ遊具は錆びていてペンキが剥げていた。滑り台こそ滑りはしなかったが懐かしさを感じた。新しくなっていた遊具もあった。順番に触りながら思い出に浸っていた。ブランコのは人気があるせいか、チェーンは錆びていなかた。たくさんの人が握るからピカピカなんだろう。えらく低い座る板。ひんやりと少し湿っている。深く腰をかけた。夜風に当たりながらブランコを軋ませながら。不思議と暖かさになる成分はその空間になかったが、暖かいものが込み上げてきた。
あの時は気ままだったな。腕白坊主で多動で。でも楽しかった。こんな姿見られたらガッカリさせるよな。もっとしっかりしないとな。
ジクジクと目尻は熱くなり、鼻腔が痛くなった。足で地面を蹴った。ブランコが反動で揺れる。何も考えなくてもただ発散するために動けばいい。なんて簡単で素晴らしい遊具なんだ。気づいた時には子供になっていた自分がいた。無邪気に只この瞬間を楽しんでいる子供の時の自分に。前後に振れるたびにチェーンが軋む。気づけば涙は乾いてなくなっていた。
行こう。昔の自分に顔向け出来るようになるために。

‘がんばれよ俺’

そう聞こえた気がした。せっかく冷めた目尻がほんのり熱くなる。

“頑張るわ‘俺’”

コンビニのレジ袋にコーヒーの空き缶を入れて芝生を踏み締める。大きな一歩を踏み出した。


2/1/2026, 1:11:52 PM