──吐息すら淡い光を纏っている。
本を読んでいるだけの姿をいつまでも見ていられるのは、惚れた欲目というやつだろうか。
ついさっきまでレポート用紙と睨み合っていたせいでインクのついた指が、そっとページを捲る。
予想外の展開が訪れたのか、伏せられていた瞳が何度か瞬きをした。文字を追う視線が動きを早める。ふいに口もとが綻んで、頰に赤みが差す。お気に召したらしい。
学園時代からの恋人は無類の本好きだ。初めて家に招いた日なんて、追っている作者の新作だ、と満面の笑みを浮かべながら分厚いハードカバーを持ってきて、それだけで一日が終わった。
最初こそ不満に思ったものだけれど、今ではすっかり慣れてしまった。むしろ、本を持っていなかったら何かあったのかと心配になる。自分が本に親しむようになったというのもあるかもしれない。
(やわらかな光)
後日加筆します。
10/16/2024, 12:00:23 PM