その目に気付いたのはいつだったか。
最初はああではなかったと思う。
強い眼差しではあったが、まだ触れられるあたたかさのようなものがあった。
「·····」
あぁ、また。
瞳の奥で、消えない焔が揺れている。
触れたら一瞬でこちらが消し炭になってしまいそうな、超高温の炎がその瞳には宿っている。
彼は私をどうしたいんだろう。
自分一人のものにしてしまいたいのか。
心も、体も。
もうとっくに私は彼のものだというのに。
他の誰にも触れさせないつもりなのか。
そんな出来もしないことを望んでしまったのか。
·····あぁ、そうか。
出来もしないこと、じゃないから彼は今、あんな目で私を見つめるのか。
やろうと思えばいつでも出来る。私を閉じ込めて、他の誰の目にも触れさせないで、自分一人しか見えないようにして。そうして私を正真正銘、自分だけのものにしてしまいたいのか。
やろうと思えばいつでも出来るソレをやらない事に、私は何を思えばいいのだろう。
彼は知らない。
どろどろと煮え滾る消えない焔は、とっくに私の心を焼き尽くして燃やし尽くして、彼にすっかり囚われているということに。
「いいよ、いつでも」
君のその、消えない焔で私をいっそ燃やしてしまって。
END
「消えない焔」
10/27/2025, 4:37:48 PM