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【宝物】

わたしの宝物は、おかあさんからもらった小さなゆびわです。
これは、おかあさんが子どものころ、おばあちゃんに買ってもらったゆびわだそうです。
おかあさんの宝物だけど、あなたにあげるねって言って、わたしにくれました。

おかあさんにもらったゆびわは、きらきらした赤い石がついていて、わっかのところも金色でつやつやしています。
このゆびわは、わたしの宝物になりました。
わたしがゆびわをつけてニコニコしていると、おかあさんもニコニコしながら見ていました。

だけどある日、このゆびわはおかあさんの宝物と言っていたのに、どうしてわたしにくれたのか、ふしぎに思いました。
わたしがおかあさんの宝物を、本当にもらってよかったのかなって思いました。
だから勇気を出して、おかあさんに聞いてみました。
そうしたらおかあさんは、
「おかあさんの宝物はあなただから、あなたのためなら、どんな宝物でもよろこんであげるよ」
と言って笑いました。

……あれから十年ほど経ち、私は高校生になりました。
今でもあの指輪は私の宝物です。
幼い子供にしか使えないようなデザインですが、ジュエリーボックスの中に大事に仕舞ってあります。
時々取り出して眺めては、母に指輪をもらった時のことを思い出しています。
確かにこの指輪は私の宝物ですが、成長するうちにもっと大事なものに気付きました。
子供の頃から大事にしていた指輪も、私が喜ぶならと渡してくれた母のことです。
母はいつも私の味方でいてくれて、いつも私のためを思って行動してくれます。
私の一番大事な宝物は、優しい母です。

11/20/2023, 10:17:18 AM