#好きじゃなのに
昔から、人を信じるという事がよく分からなかった。
温い水みたいに、
触れた端から形を失っていくものだと思っていたから。
最後まで残るのは、いつも自分だけだった。
それを寂しいと感じる前に、そういうものだと覚えてしまった。
それでも、人の幸せを祈る自分は、嫌いじゃなかった。
むしろ、そういう自分でいられることに、どこか安堵していた。
滑稽だと思う。
他人から見れば、過剰な自己愛に過ぎないのだろう。
けれど、それは削ぎ落とすことのできない本質だった。
自分のことしか愛せない。
だから、貴方を好きになることは、きっとない。
――なのに。
貴方に想われているこの状態が、
どうしようもなく、甘くて、やめられない。
貴方が好いてくれる限り、
まだ、正常な人間でいられる気がする。
どうか、このまま。
触れれば壊れてしまう本当の形に、気づかないままで。
この歪さに、名前が与えられてしまう前の時間が、
静かに、永遠に続けばいい。
3/25/2026, 12:12:16 PM