ここから歩き出す。
まだ先は長い…たぶん。
長くあって欲しい。
二つ目の信号待ちで、道に迷う外国人に声をかけられた。
自分も目的地への行き方を知らなかったから、一緒に歩きながら探し回った。
やっとそのお店を見つけた時の彼らの笑顔に救われる。
救って、救われた。
先の見えないカーブの手前で、見知らぬ老人に「この先は危険だから迂回しろ」と脅される。
近道なんだけどな。
仕方なく道を逸れて、少しだけ遠回り。
見ると、自分が進もうとしたカーブの先で、暴走車がクラッシュして煙を上げていた。
交差点の角にあるコンビニで、懐かしい友人に出会う。
最近何してんの?と聞いたら、怪しげな団体への入会を勧められた。
嬉々として人生の素晴らしさを語られる。
幸せそうだけど、自分が描く幸せの形とは違う気がして、コーヒー買って店を後にした。
広い公園を横切る。
たくさんの人達が思い思いの時間を過ごしている。
子供が蹴ったボールが足元に転がってきたので、カッコよく蹴り返そうと思ったら派手に転んだ。
慌てて立ち上がると、ボールはあらぬ方向に飛んでいっている。
ボールを追いかける子供達。…すまん。
郵便局で切手を買った。
誰かに手紙を出す予定はない。単なる気まぐれ。
ここしばらく、連絡を取ってない人達の顔を思い浮かべた。
悲しいかな、それほど多くはない。
だけど、本当に大切な人達と、直接話せることが何よりの幸せ。
この切手を貼って、今度また会いたいね、と手紙を出そうかな。
歩き出したけど、そんなに特別なことは起きない人生だ。
でも、いろんな人達と関わってきたと思う。
これからも関わっていくのだろう。
振り返る人生の軌跡は、イイことばかりじゃないし悪いことばかりでもない。
きっとこれからも同じなんだろうな。
うん、何だか楽しみだ。
今は、突然の夕立に、人気の消えた商店街の軒先で雨宿り。
通り雨だ。すぐ止むだろう。
先客がいた。うずくまる三毛猫。
恨めしそうに雨空を見上げている。
お前も大変だと思うけど、お互いにのんびり頑張って生きような。
猫は俺を見て、ニャアと鳴いた。
4/30/2025, 9:57:37 PM