空に溶ける
月のない夜は、
余りに醜いこの世の中や、
残酷で醜悪な人の心を、
視界から消してくれます。
私の傷だらけの心も、
夜の闇は、
優しく隠してくれます。
だから、私は。
真っ暗な空に輝く、
数多の星々を見上げると、
その余りの美しさに、
自分が酷く愚かに感じて、
不意に涙が溢れました。
美しい星は、
私には決して、
手が届く筈もなく、
憧れることさえ、
赦されず。
ただ、憧れに、
この胸を焼くことしか、
出来ないのです。
空の端が少しずつ、
淡い紫色に染まり、
その一時だけの優しい色が、
長い夜の終わりを告げます。
月のない夜空を彩った、
数々の綺羅星たちは、
その瞬きを消してゆきます。
空に溶ける、星たちに、
別れを告げると、
空に溶ける、私の恋慕。
そして、私は、
たった一人で、
残酷な夜明けを迎えるのです。
5/21/2025, 8:35:16 AM