夢月夜

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『星空』

共に切磋琢磨し腕を磨きあったあの日

疲れきった俺は地面に寝転がり見上げると、眩いばかりの星が一面に散りばめられた美しい星空に感嘆の声を上げ、先程まで稽古に勤しんでいた親友に向かって寝転んで見ろと脚を引っ張りすっ転ばせた。

油断していたのか、あいつは思い切り尻もちを付くと俺を見下ろしながら睨みつける。そんな事は予想済みとばかりに口端を釣り上げると指を天へ突き付け、

「空見てみろよ!すっげー綺麗だぜ!」

はしゃいだ俺の声に溜息を付くと諦めたのだろう、あいつは俺の隣に寝転がり同じように空を見上げた。

「本当……綺麗だな」

あいつの呟きに込められた驚く色に、俺はだろ?と満得意げに相槌を打つも、

「けど、転ばせたことは許さないからな」
「えー、そのくらいいいじゃん。さっき散々俺を転ばた癖にさ」
「それとこれとは話は別」

意地悪に笑い俺を揶揄して来るものだから俺も負けじと応戦するもさらっと交わされてしまう。
お互い顔を合わせると静かな夜に男二人の笑い声が空へと響き渡った。

普通に過ごしていてはきっと見過ごしていた、あいつと二人で見上げたあの景色を俺は一生忘れはしない。


例え数年経った今、俺が親友に剣を向けることとなったとしても。





7/5/2022, 12:44:01 PM