太田エイ

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人生に一度は訪れると言われているモテキですが、自分ではそれがいつかはわからない、というか、モテキが過ぎてから気づくわけで……。同じモテない親友も「俺のモテキは赤ちゃんの頃だったなあ」と悲しい回想を始めています。
かくいう私は小学6年生だったんじゃないかと思います。転校する女の子からこっそり呼び出されて「好きです」と言われたんだけど、まだまだピンと来ない男子である俺は「ありがとう」とかなんとか応えたっけ。もちろん嬉しかったけど、目の前の出来事が背伸びして見てるドラマのような感じでそのまま……。
彼女は最後の日にプレゼントをくれて転校して行きました。今思えばそれが瞬発的な俺のモテキで、そのあとはさっぱりモテない。その彼女は今いずこ?

その時にもらった妖精のような人形は、今でも机の横に置いてあります。ずっと隣で見守ってくれているような気がしている。片づけたと思ってもいつのまにか机の上にあったり、何回か引っ越しをしましたが気がつくと大事に運び新しい部屋に飾っていたり……。

そしてだんだんとわかってきました。
この人形は彼女だ。彼女の何かが乗り移って俺を見守っているのだ。いや、監視しているのだ。だからモテキがやってこない。そう考え始めてから、真剣に捨てようとしますがなかなか捨てられないし、この人形さえなければ俺のモテキが再びやってくるはず、なんとかしなくては……。


モテないまま月日が経ち、それなりの大人になった頃、同窓会が開かれた。そこに、あの彼女も来るという。
人形を見せようと持っていくと、彼女は人形を手に取って「ああ、それまだ持ってたんだ」と笑う。
「ずいぶん役に立ったわ」
そう言ってゴミ箱にぽいと捨てたのです。

長年、ずっと隣にあった人形とついにおさらばする時が来ようとは。そして、また瞬発的なモテキがやってきたのでした。
今度は逃れられない気がする……。

3/13/2026, 5:32:55 PM