木綿

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最後の夏が終わった。
自分が、才能ある選手ではないとわかっていた。
それでも、宙を舞い、刹那に見る空が好きだった。
自分の脚が地を蹴り、全身にかかった別方向の力を。
足先から、重力に逆らって上へ。
たかく、たかく。
自分自身のちからで、空に向かって。

一瞬。

それをまるで、コマ送りのように体感する。
せかいが、自分だけの速さで進む。
刻む時に見える天は、いつも、違って。
僕だけの、今ここだけで見える、色彩だ。

楽しい、だけではなかった。けれど、僕のファインダーが見つめたせかいは。
いつだって、どんな時だって、言葉にするのが勿体無いと思えるほど。

きれいだった。


「空模様」

8/19/2023, 10:47:23 PM