君と最後に会った日
君と最後に会った日、夏休みの終わり駅まで送った君は大きく手を振っていたね、今も目に浮かぶよ。
あの駅から、君の住む街に花嫁は行くのが夢でした。二人の未来予想図は予想図のまま仕舞われたね。
君の住む街はあまりに遠くて、花嫁は臆病で飛び込めませんでした。故郷がどんどん遠くなって行くことが、アイデンティティを失い迷子になってしまいそうで…。
根無し草になってしまいそうで不安でした。
いつも、そんな不安を抱えていた花嫁でした。
「お前の根っ子になってやるよ」
そう、言ってくれたのは…君じゃなかった。
それは、臆病者の言い訳なのかも知れない。
君と最後に会ったのは夏の終わり。
またねって手を振っていた、それから花嫁はベールをとりました決心して涙を拭い、君の面影にそのベールをかけて、心の奥の引き出しに仕舞いました。
「ありがとうあなた、ごめんなさい未来予想図は叶えられそうにありません、許してとは言いません、どうかどうかじゃなかった人生で私より幸せになってください」花嫁はそう認めた手紙を握りしめ破り捨てた。
それが花嫁の決心だった、意気地のないこの花嫁を君はどうぞ恨んでください。やがて忘れ去るくらいきっときっと幸せになってください。
じゃなかった方の人生で笑っていてください。
花嫁は、君のために着た白いドレスを脱ぎ涙で濡れたベールと共にクローゼットの奥深く眠らせました。
君と最後に会った日は青春という真夏の終わりでした。
2024年6月26日
心幸
6/26/2024, 1:21:17 PM