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【上映】


「もうすぐだね」

隣の彼女はうきうきとした笑顔でスクリーンを見つめている。
映画というものは、どうしてこう、楽しさを掻き立ててくるのだろう。映画館特有のポップコーンが混じったような匂いと、広告が流れている間の期待感。全てが特別に感じられてしまう。

「わたしね、映画が終わった途端に周りがざわざわ動き出すのが好きなの」
「どうして?」
「この場にいるすべての人たちが、同じ時間を共有して同じ作品を見たっていうのがすごく嬉しくて。『面白かった』とか『あのシーン凄かった』とか。ああきっと今日の夜は映画の余韻に浸って、面白かったシーンとか思い出して眠るのかな、なんて思ったり」

彼女はとても嬉しそうに語ってくれた。
そう考えてみると、なんだかより一層わくわくしてきた。
同じ時を共有して、一つの作品を見て、誰もが同じ感情になるかはわからないけれど、確かに記憶には残り続ける。

「なんか凄いね」
「うん、なんかついつい考えちゃって。勝手に一人で嬉しくなってる」

そうこうしているうちに電気が消え、真っ暗な中に巨大なスクリーンが強い光を放っている。
とりあえず、この作品を余すことなく鑑賞しよう。

映画が始まった。

9/24/2025, 2:15:34 PM