白糸馨月

Open App

お題『一筋の光』

 昔やってた遊びがある。それがまさかこんなところで役に立つとは思わなかった。
 ある日突然眠らされて、気がついたら洞窟の中にいた。目覚めた時、体のあちこちに氷の膜がはられてたからいわゆる『コールドスリープ』状態にさせられたのだと思う。
 洞窟の中には、俺の他にもう一人おっさんがいた。おっさんは積み上げた木の上で顕微鏡の接眼レンズをかざしている。

「なにしてるんだ?」
「お前もきっとガキの頃、やったことあるだろう」

 そういえば接眼レンズにむかって一筋の光が差し込んでいる。まさか
 と思った次の瞬間、木から煙が上がり始め、徐々に木が炎に包まれていく。周囲が明るく、暖かくなった。
 俺は思わず近づいて暖を取る。

「まさかこんな懐かしい方法で暖を取れる日がくるなんて」
「だろう? この近くに研究所がある。必要とあればなんでも取ってこれるぞ」
「いや、今は温まりたい。ずっと寒かったんだ」

 家族はどうしてるだろう、友達はと思ったけど今はそれよりも寒く暗い洞窟の中で明かりと、暖かさが欲しかった。

11/6/2024, 3:44:51 AM