「やっほー、久しぶりだな。会いに来てやったよ、雨。」
「久しぶりだね、いつき。1年ぶりだね。」
いつきが笑顔で話しかけてくる。
久しぶりに会うけれど何一つ変わってなくて、
少し笑ってしまう。
「いやぁ、1月にも会いに来ようと思ってたんだけど、
急遽予定入っちゃって来れなくなっちゃったんだよねぇ。」
「いいよ全然。むしろ忙しいのに会いに来てくれてありがとう。俺の方からも会いに行けたら良かったんだけど…。」
そう言うと、いつきは全然気にしてないかのようにカバンの中を漁り始める。
「いつき、これ好きだったよな?持ってきたんだけど。」
そう言いながらお菓子を取り出す。
俺の好きなお菓子。
「いつもありがとう。毎回お菓子持ってきてくれて。」
そう言うと、いつきは笑顔で俺の前にお菓子を置いた。
「あ、そうそう。聞いてくれよ、雨。最近な……」
いつきは自分の近況を楽しそうに話し始めた。
時々、愚痴が入っているが、とても楽しそうに話す
いつきの話を聞くのが昔から好きだった。
ふと、いつきが黙り込んだ後で、ぽつぽつと話し始めた。
「……雨が生きてたら、今頃何してたんだろうなぁ。
理系で賢かったし、コンピュータに強かったから、
情報系とかに進んでたのかなぁ。」
「そうかもね。でももう死んじゃってるからそんなこと
考えたって意味ないよ笑」
俺は自嘲するように笑った。
「雨と、もっとたくさん話したかったことあったし、
やりたいこともあったのになぁ……」
「俺もいつきともっと色んなことしたかったし、
もっと生きたかったよ。」
俺のお墓の前で泣いているいつきを見て、
俺も泣いてしまった。
でもね、そんなのただのないものねだりに過ぎないんだよ。
人間は何かを失った時に、失ったものの大きさに気付く
って言うけれど、
とても皮肉だよね。
ないものになってからじゃ、遅いっていうのにね。
『ないものねだり』
3/27/2024, 2:35:31 AM