虫の音も聞こえない、静かな夜。空を見上げても、星も月も何一つ見えなかった。ほぅ、と吐き出す息が白い。秋の彼岸を過ぎて、夜はめっきりと涼しくなった。もう一度息を吐き、手を擦り合わせる。その微かな音すら、夜は呑み込んでいった。とても静かだ。一人きり。誰一人おらず、何一つない。暗い世界で、ぼんやりとそう思った。
10/8/2025, 9:50:48 AM