この世界は素晴らしいと、貴方は言った。
何もかもが美しく輝き、生命があちこちに溢れる楽園だと。
晴天のキャンバスに白雲が映え、風は楽しげなロンドを歌い、海は波音を奏でる偉大なる演奏家であると。
そう語った貴方の顔も、同様に輝いていたように思う。
この世界はろくでもないと、君は言った。
人間の発展とよって汚された星と、箱庭のような社会があるだけの地獄だと。
ヒトとカネとのしがらみに囚われて、毎日どこかで争いが起こり、描いた夢は打ち砕かれるだけであると。
そう吐き捨てた君は、今は穏やかに眠れているだろうか。
この世界は知らないことだらけだと、お前は言った。
身の回りで起きること、目に入るもの、聞こえる音、全てがお前にとっては知らないものだと。
なぜ、どうして、なんでを繰り返し、答えを知ることが楽しくてかなわないのであると。
そう笑ったお前は、今も知ることをやめないのだろう。
この世界は、見る者によって姿を変えるのだろう。
私が見ている世界は、貴方にとっては素晴らしく、君にとってはろくでもなく、お前にとっては未知だらけ。
太陽の光を浴びて、毎日が楽しいと言う者もいる。
夜の闇に焦がれて、明日が来なければいいと言う者もいる。
見ているものが違うだけか、見ているものが姿を変えるのか。
それは誰にもわからない。
皆それぞれ、見ているものは違うのだから。
私が見ている世界を、違う誰かが完全に理解することはできない。
私も、違う誰かの世界を理解することはできない。
だからせめて、私の見ている世界が、感じているものが、少しでも誰かに触れられて、想像し得るように。
私は、文字を紡ぐのだ。
[この世界は]
1/15/2024, 12:12:30 PM