ほろ

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どんよりとした曇り空。今日はあまりいい日じゃなさそうだなぁ、と傘を振り回しながら思う。
「降るのかなー……降らないと良いけどなぁ」
雨が降ると髪の毛がくるくると暴れまくるから、雨の日はあまり好きじゃない。このまま曇り空でいてくれたらいいんだけど。
「痛っ」
ぼんやりしていたら、傘が誰かに当たった。
慌てて傘を握り直して、後ろを振り向く。
「先輩!?」
「よ。なんか楽しそうに傘振り回してたから、声掛けようと思ったんだけど……」
「な、なんですぐ声掛けてくれなかったんですか! 当たったところ大丈夫ですか?」
「へーき」
先輩は私に被さりながらニヤリと笑う。
この先輩、割とこうしてベタベタしてくることが多い。私の名前をようやく覚えた頃から、増えた気がする。
「で、先輩は何の用なんですか?」
「んー? 別になんもないよ。あえて言うなら、傘にいれてもらいたかった?」
「雨降ってませんけど」
「降ったらの話」
だから、それまで話そ。まるで雨が降ることが分かっているかのように、先輩は私の隣に並んだ。
空を見上げる。さっきより雲が厚くなった。なんとなく、もうすぐ降りそうな気がする。
雨は嫌いだけど、先輩と一緒に傘に入るのは好き、かもしれない。
「仕方ないですね」
降り出しそうな空の下、私たちは他愛のない会話をしながら歩く。今日はちょっぴり、いい日になりそうだ。

2/25/2024, 1:23:06 PM