白糸馨月

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お題『流れ星に願いを』

 夜、友達の手を引いて丘を登る。今日、流星群が流れるって聞いたからだ。
 やがて開けた丘の上に着く。相変わらず、なにもないこの村の夜空にはたくさんの星がきらめいている。
 いつも見ている夜空だけど、毎回きれいだと思う。

「お前、願い事あんのかよ?」

 友達に聞かれて、「うーん」とはぐらかす。

「それはこれから決める」
「ふぅん、あっそ」
「そういうお前はどうなのよ?」
「お前、わかってんだろ。俺の願いは流れ星に願ったって叶わないことを」

 友達の見上げている顔がどこか悲しげに見えた。そうだ。こいつは、つい最近母親を亡くしたばかりだ、こいつのお母さんはずっと病気がちで、いつも面倒みていたっけ。
 お母さんが亡くなった時、あいつが母親の亡骸にしがみついて一人泣いているのを見てしまった。
 人を生き返らせることなんて、誰にも叶えることなんて出来ない。

「ごめん」
「いいよべつに。あ、流れ星」

 空を見上げると、星が流れるのが見える。いくつも、いくつも星が尾を引いて、俺は手を組んでお祈りした。

(どうか、こいつが悲しまないように、元気になってくれますように)

 流れ星そっちのけで、ずっと祈っていたら

「お前、なに一生懸命祈ってんの?」

 とか言ってきた。

「どんな願い事だよ?」

 友達がニヤニヤしながら聞いてくる。それがなんだか気恥ずかしくて、

「お前には教えねぇよ」

 と友達の顔を視界に入れない代わりに流星群が流れ続ける空を見上げた。

4/26/2024, 3:31:45 AM