#こんな夢を見た
―――
無駄に残る畳と、木の匂い
ここに居るのだと主張する蝉の声
頬を伝うサラサラした汗
ただ映るのは、木目の多い天井
...所詮、ひと夏の風景に溶け込んでいると、デコに何やら冷たい感覚。
いきなりのそれに声を上げると、笑い声が一つ
「油断大敵ってやつだよ、ワトソンくん」
「いやなんで今ワトソン?」
身体を起こしながら問かければ、気分?だなんて曖昧な答えが返ってた。
まぁ何時もの事なので、こちらもそーかいと返すだけなのだが。
「そんな事より、ラムネ買ってきたから一緒に飲も」
「...ラムネなんて珍しいな」
「ずっと飲んでみたかったのだよ!」
「炭酸苦手なのに?」
「飲めなかったら代わりにもう一本飲んで欲しいな」
「もぉ、別にいいけどさ」
そう言って、青い瓶を受け取る。
中で転がる響いたビー玉の音も、プシュりと瓶の開く音も、妙に懐かしい。
「......そーいえばさ、夏祭りどうする?」
「!」
「折角だし、新しい浴衣を新調しようと思ってるだけ「あのさ」ん?」
「......夏祭り、行くのやめないか?」
俺がそう言うと、目を丸くしてこちらを見詰めてきた。
そりゃそうだ、前々からずっと、計画を立てていたのだから。去年は祭りが中止になったから、今年こそはって話していたのだから。
「...どうして?」
当然の疑問だ。
ミーンミーンと、蝉の声が頭に木霊する。
俺は何も言えず、押し黙る事しか出来なかった
「...言えない?」
「...ごめん」
「...そっか」
隣から、カランとラムネを傾けた音が聞こえた
「...ごめんね」
「!」
「一緒に行けなくて」
「ち、違う!元々、俺がたこ焼きを食べたいなんて言わなければ...」
...祭囃子の、音
「そんなことないよ」
「二日目に行かなければ...」
鮮烈に揺らめく、赤色
「私だって賛成したじゃん」
「違う、違う、違う」
「君が、気に病む必要はないんだよ」
「待って!待ってくれ―――」
そこで、俺は目が覚めた。
背中には、気持ちの悪い濡れた感覚がある。
燃えるほど暑いのに、体の芯は、あの時と同じく冷たい
「.........」
視界には、まだぼんやりと夢の―――あの日の、一ヶ月前の景色が映っている。
「......ははっ」
こんな夢を見たのなら、いっその事、閉じ込めてくれれば良かったのに。
あの、幸せな夢の中に
1/23/2026, 1:09:44 PM