NoName

Open App

短いまつ毛に寝癖がついてる
髪のはね方は相変わらず どれが寝癖でどれが元からだったか
味噌汁の味噌、ちょっと入れすぎたって笑う
そんなことよりこの芸術的なネギがいいねって笑い返す
トーストの上のバターが溶けきる前に 慌てて塗りきって 端っこの方が少し 素朴なパンそのものの味
朝顔が毎日少しずつ伸びる
と思っているうちに、生い茂っている
今年も立派なグリーンカーテンができた
赤ピンクやまだら模様の大きな水玉と蔦巻く緑葉からなる日陰は秘密の楽園みたい ここで朝飲む珈琲が好きだ。
とは言わない。ポエティックが過ぎて恥ずかしいので

おかえりと言う時とただいまと言う時がある けどいつも何かしらは言う
夕餉支度の湿度が窓を曇らせる
雨が降っていたことに気づかなかった 部屋の中の音が鳴り止まないから
電気を消して気づく 人の呼吸音の大きさ
何かを忘れている気がするけど、身体が寝たがっているので従順に横になる

知らない匂いはいつの間にか無臭になった
鼻が馴染んだらしい もうきっと これからは 自分独りの部屋の方が、知らない匂いになる

何を忘れていたか思い出した
おやすみと言うのを忘れていた
暗闇の中で「おやすみ」と言うと、小さなモニョモニョとした聞き取れない返答と、あったかい手のひらがお腹の上に落ちてきた

(日常)

6/22/2024, 2:08:41 PM