NoName

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旅人はいつからか街に現れて、やがてそこを去っていった。

親切にしてくれた人も喧嘩ばかりしていた人も、
別れを告げた人も告げられなかった人も、
今はたださようなら。

日常に紛れてしまえば、彼の存在はあまりにもささやかで、
新しい朝が来る頃には、きっとみんな忘れてしまう。

彼が街に残したものは、ほんの小さな友情といっときのお祭り騒ぎ。
いつか懐かしく思うかもしれない記憶は、今はまだ思い出と言うには新しすぎて。

いつか、日常の隙間に思い出すだろう。
君の名前を呼ぶだろう。
そのときもきっと君は旅の途中。
この空の下、道の先。

7/3/2024, 2:08:45 PM