シオン

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 僕は権力者のことが好きで、それは紛れもない事実だ。本来ならば、天使というものはそもそも恋心を抱くこと自体を禁じられている。それはそもそも恋心というものは、常に汚れと純真の間にあるという思考回路の元からなるし、また恋心を抱いてあろうことが何か子供を作ってしまった時に、それが一体何になるのかわからないからでもある。分からないのであれば、そもそもその原因は作らないようにするそういう思考のもと、恋心というものを禁じられていた。
 人間の恋を応援する天使なんていない。自分たちは禁じられているというのに他人の恋をわざわざ応援する、そんなことをするバカがいてたまるか。天使は元々そんな思考回路があるみたいだった。
 そのことから考えるといくら堕天使であろうとも、恋心を抱いているというのは、あまりにも稀有なことで。
 できないことができているというのはもしかしたら世界で一番幸せなことなのかもしれない、なんて考えた。
「ということで、僕は世界で一番幸せ者なんだよ」
 そう、彼女に伝えたらえらく怪訝そうな顔をされた。
「…………バカじゃないの?」
 物言いまで冷たい、両想いだというのに。
「……きみは?」
「世界で一番じゃないかもしれないけれど、大体そんなキザなセリフを吐くような勇気もないけれどまぁ少しは幸せなんじゃないの?」
 まるでツンデレのように、そんなことを言った彼女の顔は微妙に赤く染まっていた。

9/9/2024, 3:46:58 PM