君に会いたくて
二月へ突入しつつある今日この頃。
僕に向かって飛んできては
たちまち肌を刺すつるぎのような寒風と、
僕のなかで、ゆっくりと凍りついてゆく何かの前では幾重にもなる衣服の鎧も、
まるで歯が立たないようだ。
僕を取り巻くすべての冷ややかさに、
スニーカーの中の足先が、僕の言うことを聞けなく
なってきたとき、厳しい冬の匂いに紐付けられて、
不意にあの街と君に関してが記憶から引き出された。
僕の人生の30パーセント程度を過ごした場所は、
僕のセピア色の記憶から、新しい色へ
随分と塗り替えられたらしい。
良いことも悪いことも全て鮮明に覚えておかなくてはならない君との思い出も、随分と改ざんされて、優しい思い出になっていた。
君に会いたくて。
でも、あの街ごと変わってゆく君の姿を、もう見たくなくて。
もう、君のそばで変わることの出来ない僕を
君に会わせたくなくて。
1/19/2024, 4:47:09 PM