友達が結婚した。
華やかで、厳かで、けれど温かく柔らかい。そんないい式だったと思う。
新郎のスピーチで、彼はずっと幸せそうにはにかんでいた。
彼女を幸せにするのだと何度も繰り返して、キラキラした将来への展望を紡いでいた。
皆笑顔で、新郎新婦の幸せを祈るように温かい雰囲気だった。
僕一人だけが、笑っていなかった。
僕と彼、共通の友達は僕のことを心配して様子を伺ったりしてくれていたけれど、曖昧な笑顔に包んで全部隠してしまった。
皆が感動で泣いているのに、僕は、僕だけは、どうしようもない喪失感と、安堵と、得体の知れない感情が渦巻いている。
それがどうにも気持ち悪くて、口角を保っていられなかった。
何度も何度も魔が差しかけた。
香典を包む時、いつか別れるように四万を包みかけた。
素直に祝える気がしなくて、いっそ黒のネクタイで行ってやろうかと思った。
そんな、非道で馬鹿みたいな考えが頭を埋めて、でも怖がりな僕は結局その全てを実行することは無い。
受付の時に二人の幸せを願った口があまりに悍ましくて、でもどう見たって二人はお似合いで、口から出せなかった本音が雫となって目を覆った。
彼らはきっと、僕なんかがいなくなったって、たくさんある人生のパズルのピースが一つ欠けるだけなのだ。
気になりはしても、それが致命的な何かになることは一生無い。
でも、僕が今日失ったのは彼との全部だった。
僕の人生のパズルの根底を成していたピースが、ごっそりなくなった。
不安定になって、上にたくさん積んでいたはずの平穏が崩れていく。
白い箱に丁寧に包まれたバームクーヘンは、甘くてきっと美味しいのだろう。
僕は、やっぱりそれを食べることはできなかった。
友達の家庭の幸せと一緒に、カビて腐って、手も付けられなくなればいいと、そんなお呪いをかけてしまった。
テーマ:幸せに
4/1/2026, 8:51:31 AM