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家族以外で、余命2ヶ月足らず、という人の話しを伺ったことがあるだろうか…
25年前、息子が1歳になる前にY先生から、
「息子さんを連れて、〇〇さんが入院している病院へ訪問へ行ってください」と、言われた。

わたしはすぐには『はい』とは言えなかった。院内感染の危険もあったし、何よりも訪問などしたことがなかったので、怖かった。〇〇さんは、女性で、余命数カ月で、甲状腺のガンで末期。子供が4人居て、下のお子さんが幼稚園の年長さんだった。

結局悩んで息子は連れて行かなかった。

〇〇さんは、目がキラキラとしていてわたしの事を歓迎してくれた。話すと言っても、息が切れてしまって言葉も力なく、「話しを聴かせて…」と、逆にお願いされた。入信して半年経った頃の事で、何を話していいのやら分からなかったけど、なぜ入信したのか、という事を話した。

途中、「苦しい…」と、言ってナースコールを押して、結局看護士さんから「帰ってください」と、言われて帰ってきた。

何も出来なかったし、何も聴けなかった。

Y先生に報告して、1ヶ月も経ってなかったと思う、〇〇さんは亡くなった。一番下のお子さんの事を心配されていて、ベテランのお世話人さんが、「『心配すること、それは、執着だから…』と言う話しをしたんだ」と、後から聞いた。それはY先生から、「その話しを最後に伝えなさい」と、言われた、と。

とても辛かったと言ってた。

『死にたい死にたい』と言う人は、『生きていたい…』と、心底願う人に何を伝える事ができるんだろう、少なくとも、実際に家族以外の人の今際の際に一度、寄り添ってみたらいいと思う。

『それでも、』と、言うなら、それなら勝手にすればいいと思う。

〇〇さんが亡くなって、それほど時が経ってなかったと思う、ある朝、明け方に布団の中でぼんやり目が覚めて、

『ア、リ、ガ、ト、』と、声が聞こえた。夫も息子も眠っている時間。

わたしはその時、『あっ、〇〇さんだ…』と、思った。感謝されるような事は、なにもしてない。だけど、〇〇さんに、あの日の最後に『祈る』って、言うことを懸命にお伝えした。それは、Y先生にこれだけは、貴女から伝えなさいと言われたから、だ。

後にY先生から、「この出来事を、忘れないように」と、一言だけ言われた。

わたしが一歩踏み出した日の出来事。





4/13/2025, 11:22:11 AM