どこまでも続く長いハイウェイ
一台の青い車が走っている
運転しているのはいつも君
同乗しているのはいつも私
気が向いたときには私がハンドルを握り
君は助手席で夢を見る
車の中は不思議な空間だ
運転しながら君とする会話はいつもよく弾む
たまに喧嘩もするけれど
不貞腐れて窓の外を眺めているうちに
いつの間にか仲直り
エンジンの音の上でループするリズム
ロードノイズが奏でる二人のグルーヴ
私達の旅は気まぐれだ
目的地なんてあってないようなもの
山だろうが川だろうが
昼だろうが夜だろうが
走りたい場所を走りたい時に走り
疲れたらその辺のモーテルで休む
目的地は決めてないけれど
行く道を決めるのはいつも君
二択を選ぶとき
困り顔の君は
それでいていつも選択を楽しんでいた
ある日の朝
モーテルでいつものように二人だけの時間を過ごし
朝日が昇るとともに起きた
君がいない
慌ててモーテルを飛び出すと
車のボンネットに腰掛けて黄昏れている君を見つけた
私に気がつくと君は笑って
「もう降りなきゃ」
そう言って君は、右手をアンダースローの形に構え
私に向かって何かを放り投げる
私は地面すれすれでそれをキャッチする
自動車の鍵が私の掌に収まっている
顔を上げると、もうそこに君はいなかった
私は、荷物をまとめて車に積み込み
鍵を差してエンジンをかける
誰も乗っていない助手席に目をやるが
すぐに前を向いてハンドブレーキを下ろし
ハンドルを握ってギアを上げる
私の旅が、どうか綺麗でありますように
君の旅が、どうか綺麗でありましたように
「−旅路の果てに−」
1/31/2023, 4:02:36 PM