【枯葉】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
2/20 PM 6:00
「まだまだ寒いけど、先月に比べたら
日が延びてきてる気がするねー」
確かに、先月までならこの時間に
もうすっかり空が濃い藍色に
染まっていた気がする。
けれど今は、西側の空にはまだ
夕焼けの赤色が幽かに見えていた。
「油断してるとすぐ春が来そう」
「暁は寒がりなんだから、春が来た方が
嬉しいんじゃないの?」
「そうなんだけどね。でも、寒い季節の
枯葉を踏んだ時に鳴る、カサカサって
ちょっと耳がくすぐったいような音は
好きだから、名残惜しくなるっていうか」
「ああ……その感覚はなんとなく分かる」
「あ、分かってくれる?
ありがとー、真夜(よる)くん。
宵ちゃんはあんまり好きな音じゃない?」
カサカサ鳴る枯葉の乾いた音。
暁はくすぐったいと言ったけれど、
アタシは――……
「寂寞感を抱く音だと思うわ」
「せきばくかん?」
「単純に言えば、もの寂しさを感じる音
ってことだよ」
「あー、うんうん。わたしはなんだか
楽しくなっちゃうけど、宵ちゃんは逆に
寂しくなっちゃうんだ。
でも、そのセンチメンタルな感じも
あるある! って思う」
あるある、と言いながら、
暁が急に抱きついてくる。
「ちょっ……何なの、いきなり」
「寂しい時はくっつくと安心するかなって。
ねー? 真夜くん」
「……そうだな」
暁に促されたせいで、
真夜まで後ろから
アタシを抱きしめてきた。
「あのねぇ……道端で人のこと
サンドするのはやめなさいよ……」
2/19/2023, 3:40:48 PM