口を開けばあの子のことばっかり
目の前の私を見て欲しい。
そう思うようになったのは
春過ぎて日が沈むのが遅くなった午後六時。
彼があの子が好きと私に告白してきた日だった。
その日は胸をチクッとする痛みには
気付かないふりをして
彼と2人で帰ったことを覚えている。
彼があの子のことを口にする時
彼とあの子が進展したことを表していた。
私は平気なフリをして
彼にアドバイスをしたりもしていた。
私は自分見て欲しいと同時に
彼が幸せになることを望んでいた。
数ヶ月後彼はあの子と結ばれた。
この報告を聞いた時は嬉しかった反面
心の中は悲しさでいっぱいだった。
あの子を結ばれたから
この帰り道ももう2人では帰っては行けないこと。
それがなんだか寂しかったのを覚えている。
─────『初恋の日』
5/7/2024, 11:19:09 PM