いちましろう

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真っ直ぐに見つめていた目は、上下左右に気を取られ、背後や他者の目を気にするあまり、夢中になりそびれた。たばこ屋のお婆さん、高速自転車の中高生、野球のユニフォームを着たおじさん、ジャージ姿の先生、ジャングルジムのてっぺんの双子。つぎつぎと目に入ってくるものもの。目だけが忙しく、気持ちや思考はついていかなかった。死んだ蜂の黒と黄色に、水たまりに浮いた油に、真っ直ぐすぎる道に。圧倒されるばかりで、手も足もでない世界を、遠ざけ遠ざかれされるうちに、あの子ともいつしかサヨナラしていた。

6/23/2021, 1:17:33 PM