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雪化粧を施した白樺並木は、満月の光で宝石のように輝く。枝先まで氷を纏った姿はシルクのドレスのようで、そのドレスの裾、まっさらな雪道に、白色のジムニーが足跡を残している。
数刻前までジャズを奏でていたラジオは、いつの間にかザラザラとした音が混ざっていた。そうして完全に音色を失った時、助手席の白猫がスイッチを切った。
「もう、来るよ」
白樺並木が終わりを迎えた時、ダッシュボードに前足を掛けた猫が、ざらりとした声を出した。真っ白な広場に車を停め、足早に降りた猫の後を追う。広場の真ん中では、艶のある白い毛並みが満月に照らされて金色に輝いている。白猫の小さな足跡に追いついた時、 満月がいちばん高い所へ辿り着いた。白猫が尾をふわりと揺らす。
「じゃあね」
突風が轟と吹き、雪を纏って猫を包み込んだ。

雪景色を施した白樺並木に残された足跡を、白色のジムニーが辿る。満月は帰路に向かい、東の空が白んでいる。
「また来年だね」
ダッシュボードに手をかけた黒猫が、ざらりとした声を出した。

【特別な夜】

1/21/2023, 12:34:29 PM