胸が高鳴る
こんなこと、初めてだ。
ああ、わたし。わたし!
今が人生でいちばん、どきどきしている。
胸が高鳴る。
目の前には、大好きなあなた。
真っ赤な床を一歩づつ、踏みしめて、近づく。
あなたはもう、脈がない。
わたしはこんなにも、どきどきしてるというのに。
…もう、起きてよ。悪かったってば!
…でもっ、あんなこと言ったあなたも悪いんだよっ。
放課後。誰もいない体育倉庫。すてきな夕暮れ。
「わたしと…っ、つきあって、ください!」
斜め45度。上目遣い。完璧!
心臓がうるさい。ばくばく、どきどき。
きっと、これからあなたとの…すてきな、すてきな…!
「……ごめん。」
…ああ、そういえば、胸の鼓動がうるさくってさ。
なんて言ったか、聞こえなかったなあ。
あなたに、最初で最後のハグをする。
あなたは、冷たい。
(これがほんとの、脈ナシってやつかな)
足を引き摺りながら、そんなことを考えた。
…脈がなかろうと、わたしの愛は変わらない。
この胸の鼓動だって、止まらないんだから!
3/19/2026, 3:19:10 PM