無垢な雛鳥、目覚めたばかりの柔い翼
まるで機械のようだと不気味がる者もいた
思考を持たぬ人形と嘲る者も
それも間違いではないと、君は言うかもしれないが
透明な瞳が私を追って、ほんの僅かに口角が上がる
一度背負えば誰よりも速く、高く飛翔する
美しいと思ったんだ
光を受けて煌めく君が、たとえ死神であろうとも
まるで、いつか見た紙の本に記された天使のようだと
そう、思ったんだ
気付けば君に焦がれていた、なんて
芽生えた恋を告げたなら信じてもらえるだろうか
今や君は神の如く賛辞され
けれど無数の眼が怯えているのを私は知っている
眩い星は撃ち落とされる
救世の光であろうとも、故に人は恐れるのだ
燃える瓦礫、ぶら下がる配管
鉄の棺桶に閉ざされた君の亡骸
そんな悪夢に飛び起きる
飽きるほど、呆れるほど、私もまた怯えている
無垢な雛は記憶の彼方へ
今、隣に在るのは気高い翼
私を選んでくれた、優しく哀しい一羽の烏
知っている、分かっているとも
いつの間にか君の背を眺めることが増えた
見下ろしていた旋毛が見えなくなって
妙な寂しさを覚えたことも、忘れていない
薄暗い寝室、ふと目を開けた君
ヘラヘラと笑う私を笑いもせずに
ぬるい手のひらがこの背を叩く
あんなに恐ろしかった悪夢が、鏡越しの像が
叩けば割れるガラクタになって、おかしくてまた笑う
今度は共に飛ぶ夢を見よう
応えたくて、私も手を伸ばした
(君の背中を追って)
6/21/2025, 12:02:51 PM