Theme:神様へ
神様。
どうか雨を降らせてください。
干ばつが続き、村は壊滅寸前だった。
話し合いの末、神に生け贄を捧げることにした。
神に捧げる御子は、胸に特徴的な痣を持つあの子を選んだ。
あの子の両親を『説得』し、無邪気な笑顔を向けるあの子の手を引いて、神様にもっとも近い場所であるあの丘へと連れていった。
その後、数ヵ月ぶりに雨が降った。
これまで続いていた暑さが嘘のような、氷のように冷たい雨だった。
神様の恵みなのか、あるいはあの子の涙なのか。
どちらにしても、私たちは救われた。
神様のご加護の、あの子の犠牲によって。
それ以降、かつて村があったこの地では季節外れの冷たい雨が決まって降る。
その謂れを知っている人間も今ではほとんどいない。
雨の降る日は、私は今では公園となったあの丘へ向かい、手を合わせる。
それが代々の地主であり、一族の末裔である私たち子孫に課せられた贖罪だから。
4/14/2024, 11:45:53 AM