『愛を叫ぶ。』
愛してやまない恋人とキスをすることに、多幸感を抱かない人はいないだろう。
俺だってそうだ。
ベッドボードに眼鏡を置いた。
ピントを失った視力を補うように、先に毛布に包まっていた彼女と顔を近づける。
目を閉じて、咄嗟に息を潜めてしまう彼女のために、わざとらしい猶予を作るのが好きだ。
すぐに望んだ体温が降ってこないことに、彼女の長い睫毛が不安気に持ち上がる。
赤く染まった頬のラインを指で滑らせ、細い顎を掬い、薄い桜色した下唇に親指で触れた。
「キスしても?」
「ぁ……」
羞恥心を掻き立てられたことに気づいた彼女が、唇をきつく閉ざす。
「イヤですか?」
逃げ道を塞ぐために、彼女に断られないための言葉を選んで追いつめた。
顔は上を向かされたまま、身動きが取れない彼女の取れる意思表示は言葉のみ。
「ゃ、…………じゃない……」
震える唇で告げる彼女の言葉が、か細く寝室に溶けていった。
羞恥心で強張った彼女の体をほぐすために、軽く唇を重ねる。
唇を伝って、ゆったりと互いの熱を溶かし合い、混ぜ合わせた。
数秒もすれば、照れた彼女が顔を引いて俺の様子を窺う。
顔を背ける彼女を追いかけて、今度は唇を啄んだ。
チュッ、チュッ、と今さら下心を包み隠したようなリップ音を何度も立てれば、彼女の口元がわずかに和らぐ。
「かわいい……」
その薄くて小さな唇を包み込んで甘噛みすれば、熱を孕んだ瑠璃色の瞳は言葉なく愛を求めて叫ぶ。
ひどく蕩けた扇状的な表情に、俺の理性は弛緩し、背筋から劣情が昂った。
「口、開けて?」
まだ強く理性が残っている彼女に、無理を強いているのは自覚している。
「ん……」
それでも、彼女は羞恥を振り払い、うっすらと唇を開いた。
彼女が躊躇いながらも素直に深いキスを許すのは、羞恥心も緊張も、俺が全て剥ぎ取ってしまうことを覚えてしまったからだ。
「ふっ。いい子」
俺の服に縋る、彼女の小さな口内に舌を差し込み、舌を絡めていく。
熱を帯びた体を抱き込み、互いに早鐘を打つ心臓の音を響き合わせた。
深く、長く、甘く、愛を確かめ合うために。
5/11/2026, 10:47:31 PM